
WordPressでサイトを運営していると、「この部分の色を変えたい」「記事の書き方をもっと効率的にしたい」といった、自分だけのサイトに育てていきたいという想いが生まれてきます。しかし、どこから手をつければ良いのか、初心者にとっては分かりにくいものですよね。
WordPressのカスタマイズは、大きく分けると「エディタ(編集画面)の選択」と、より高度な「ソースコードの編集」の2段階があります。特に「クラシックエディタはもう古い?」「ソースコードを触って壊れたらどうしよう…」といった不安は、多くの方が感じるところでしょう。
この記事では、日々の記事作成を快適にするエディタの選び方から、デザインや機能を自分好みに変更するソースコードの安全な編集方法、そして何より大切な「失敗しないための準備」まで、一連の流れで丁寧に解説します。あなたのサイト運営が、もっと自由で楽しくなるヒントがきっと見つかりますよ。
まずは基本!エディタを理解しよう【ブロック vs クラシック】
WordPressで記事を書くための編集画面を「エディタ」と呼びます。現在、WordPressには新しい「ブロックエディタ」と、旧来の「クラシックエディタ」の2種類が存在し、どちらを使うかが最初の大きな選択肢となります。
ブロックエディタ(Gutenberg)とは?
ブロックエディタ(通称:Gutenberg)は、現在のWordPressの標準編集画面です。文章、見出し、画像、ボタン、カラム(段組み)などを、それぞれ独立した「ブロック」という部品として扱い、それらを積み上げてページを組み立てていきます。
まるでレゴブロックのように直感的にレイアウトを組めるため、コードの知識がなくてもデザイン性の高いページが作りやすいのが特長です。例えば、「画像の横にテキストを回り込ませる」「背景画像の上に文字を乗せる」といった、以前は専門知識が必要だった表現も、専用のブロックを使えば数クリックで実現できます。
最初はブロックの概念に少し戸惑うかもしれませんが、段落ごとドラッグ&ドロップで入れ替えたり、ブロックの設定を変えるだけでデザインを変更できたりする便利さを知ると、手放せなくなるでしょう。今後のWordPressの進化はこのブロックエディタが基準となるため、今から慣れておくのが賢明です。
クラシックエディタは今も使える?
クラシックエディタは、かつてのWordPressの標準エディタで、Microsoft Wordのように、太字や斜体、箇条書きなどのボタンが上部に並んだ、一枚の大きな入力画面が特徴です。現在でも公式の「Classic Editor」プラグインを導入すれば、この使い慣れた環境を利用し続けることができます。
では、なぜ今もクラシックエディタを使い続ける人がいるのでしょうか。最大の理由は「長年使っていて、操作に慣れているから」です。特に、更新担当者が複数いる企業サイトなどでは、編集フローを大きく変えることが業務の混乱に繋がるため、あえて旧来の環境を維持しているケースが少なくありません。
ただし、WordPress公式は、このプラグインのサポートを「少なくとも2024年まで」と発表しており、それ以降の継続的な更新は保証されていません。 サポートが終了すると、将来的にWordPress本体のバージョンアップに対応できなくなったり、セキュリティ上の脆弱性が修正されなくなったりするリスクが高まります。長期的な利用は推奨されない、というのが現在の見解です(2025年7月現在)。
参考:WordPressクラシックエディタはいつまで使える?初心者向け解説!
初心者はどちらを選ぶべき?
結論から言うと、これからWordPressを始める方は、最初からブロックエディタに慣れるのがベストです。今後の機能追加や新しいテーマ・プラグインは、すべてブロックエディタを前提に開発されるため、将来的な拡張性や安全性を考えると、最も合理的な選択と言えます。
簡単なブログ投稿
- おすすめエディタ: ブロックエディタ or クラシックエディタ
- 理由: 文章中心ならクラシックエディタのシンプルさも魅力ですが、将来性を考えるとブロックエディタがおすすめです。
デザイン性の高いLP制作
- おすすめエディタ: ブロックエディタ(または専用プラグイン)
- 理由: カラムやボタン、余白などを視覚的に調整できるブロックエディタが圧倒的に有利です。
企業サイトの構築
- おすすめエディタ: ブロックエディタ
- 理由: 拡張性や保守性を考慮するとブロックエディタが標準となり、クライアントへの納品も想定しやすいためです。
一歩進んだカスタマイズ:ソースコード編集の世界
テーマやプラグインだけでは実現できない、細かなデザイン調整や機能追加をしたくなったとき、次のステップとなるのが「ソースコードの編集」です。ここでは、その基本知識と安全な編集方法を解説します。
ソースコードって何?(HTML/CSS/PHPの役割)
ソースコードとは、Webサイトがどのように表示され、動くかを決めている、いわばサイトの「設計図」です。WordPressでは主に3つの言語が使われています。
- HTML:見出しや段落といった、ページの「骨格」を作る言語。建物の「部屋割り」や「柱・壁」にあたります。
- CSS:骨格であるHTMLに色やサイズ、配置といった「デザイン」を施す言語。「壁紙の色」や「家具の配置」のような役割です。
- PHP:表示内容を動的に変えるなど、サイトの「仕組み」を作るプログラミング言語。「電気や水道、スマートホーム設備」に相当します。
これらのコードを正しく編集することで、サイトの見た目や機能を自由自在にカスタマイズできます。
どこで安全に編集する?3つの方法
ソースコードを編集するには、主に3つの方法がありますが、初心者の方には「3. プラグインを使う方法」を強く推奨します。
- テーマファイルエディター(非推奨)
管理画面の「外観」から直接編集できる手軽な方法です。しかし、WordPress自身が「直接編集はおすすめしません」と警告するように、たった1文字のミスでサイトが真っ白になり、管理画面にすら入れなくなるリスクが非常に高いです。 - FTPクライアントを使う方法
「FileZilla」などの専門ソフトでサーバーに接続し、ファイルをPCにダウンロードしてから編集する方法です。 万が一ミスをしても、元のファイルをアップロードし直せば復旧できるため、比較的安全です。サーバーとのファイルのやり取りに慣れる必要はありますが、覚えておくと非常に役立ちます。 - プラグインを使う方法(推奨)
「Code Snippets」というプラグインを使えば、テーマの重要ファイルを直接触ることなく、安全にコードを追加・管理できます。 追加したコードは「スニペット」として個別に保存され、ボタン一つでオン・オフを切り替えられます。トラブルが起きても即座に問題のコードだけを無効化できるため、初心者にとって最も安心できる方法です。
よく使うカスタマイズコード例
ここでは、「Code Snippets」プラグインで簡単に追加できる、便利なカスタマイズコードの例を紹介します。これらはサイトの使い勝手を向上させる良い練習になります。
例1:管理画面の不要メニューを非表示にする
自分しか使わないサイトで「コメント」メニューが不要な場合など、以下のコードで非表示にして画面をスッキリさせることができます。
※このコードはfunctions.php
または「Code Snippets」に追加してください。
function remove_menus_for_user() { // 「コメント」メニューを非表示にする remove_menu_page('edit-comments.php'); } add_action('admin_menu', 'remove_menus_for_user');
例2:投稿画面に独自の入力欄を追加する
レビュー記事で「評価点」など、毎回決まった項目を入れたい場合に便利です。以下のコードで、投稿画面に専用の入力欄(カスタムフィールド)を追加できます。
※このコードはfunctions.php
または「Code Snippets」に追加してください。
function add_my_custom_box() { add_meta_box( 'my_custom_box_id', '追加情報', 'show_my_custom_box', 'post' ); } add_action('add_meta_boxes', 'add_my_custom_box'); function show_my_custom_box() { echo '<label for="my_field">評価点: </label>'; echo '<input type="text" id="my_field" name="my_field" />'; }
カスタマイズの鉄則!失敗しないための準備
エディタの変更やソースコードの編集など、サイトに大きな変更を加える前には、必ず「失敗しても元に戻せる準備」をしておくことが何よりも重要です。
なぜバックアップが絶対に必要なのか
バックアップは、カスタマイズにおける「命綱」です。万が一、サイトの表示が崩れたり、データが消えてしまったりしても、バックアップさえあれば、トラブルが起きる直前の状態にいつでも復元できます。
重要なのは、サイトが「ファイル(テーマや画像など)」と「データベース(投稿記事や設定など)」の2種類のデータで成り立っていると理解すること。無料の「UpdraftPlus」といったプラグインを使えば、この2つをセットで、数クリックで丸ごと保存できます。作業前には必ずバックアップを取る習慣をつけましょう。
万が一の復旧方法を知っておこう
もしコード編集のミスで管理画面に入れなくなっても、復旧方法はあります。その代表的な方法が、FTPを使ったテーマの強制変更です。
- FTPクライアントでサーバーに接続します。
wp-content/themes/
フォルダを開きます。- エラーの原因となっているテーマのフォルダ名を、一時的に別の名前に変更します(例:
my-theme
→my-theme_old
)。 - これによりWordPressはテーマを見失い、自動で標準テーマに切り替わります。
- ブラウザで再度管理画面にアクセスすると、ログインできるはずです。
ログインできたら、落ち着いて「Code Snippets」プラグインで追加したコードを無効化するなどの対処をしましょう。この復旧方法を知っておくだけで、焦らず冷静に対処できます。
まとめ



WordPressのカスタマイズは、まずブロックエディタを使いこなすことから始まります。日々の記事更新に慣れ、さらにサイトを自分好みにしたくなったときが、ソースコード編集へのステップアップのタイミングです。
ソースコードの編集は、一見すると難しく感じるかもしれません。しかし、正しい知識と手順さえ守れば、決して怖いものではなく、サイト運営の自由度を格段に上げてくれる強力な武器になります。
- これから始めるなら、将来性のあるブロックエディタに慣れる。
- コードを編集する際は、安全な「Code Snippets」プラグインを活用する。
- どんな作業の前にも、必ずバックアップを取る。
この3つの鉄則を守ることで、あなたは失敗を恐れることなく、自由なカスタマイズの世界に挑戦できます。この記事を参考に、あなただけのオリジナルサイトを育てていってくださいね。